教職員組合の今!教師を目指すなら現場実態を知っておこう。
通称「日教組」:JTU(日本教職員組合)とは、各県教職員組合からなる連合組織であります。ですから、各県の教職員組合は、それぞれ単体組織であり、それがJTU(日本教職員組合)に加盟するという形で全体が形成されています。
同じ公務員の組合組織でも他には「自治労」などがありますが、これらは中央本部と各県支部という関係であり、連合組織である教職員組合とは形体を異にします。
どちらがベターであるかはわかりませんが労働者のナショナルセンター「連合」が形成されたときに、中央本部で決定して連合に加盟した自治労などと違い、各県段階の大会で大もめした挙句に、県段階で組織が分裂をしたようなところもあるほどに激動したというのが教職員組合の辛い結果でした。
日教組の役割、各県教組の役割
日本のような中央集権国家では、国に対しての交渉力が無ければ何事も権利面での獲得は進展しません。各県は国の言いなり状態ですから、日教組は文科省と政治的な折衝をする役目を果たします。それを受けて、各県教組は県教育委員会との折衝を行います。
それらすべては高度に政治的なものを含む活動です。そして現場の組合員は、現場段階で管理職と対峙します。このように、組合は日教組→加盟県教組→県内各支部→各学校分会というつながりを基本としながら運営されます。
組合の獲得した権利
戦後の長い歴史のうちに、年休(有給)の日数拡大や育児休暇、産前産後の休暇など民間に先行して採用され、女性が仕事を辞めずに働き続けられる職場の環境作りルールを作り出してきたという意味で、教職員組合を含む公務員関係組合の先行して果たしてきた役割は大きいものがあります。
今では、そのかなりの部分が法律として一般企業にも適用され、広がってきました。今日では介護休暇なども、これらの組合の活動により進展してきています。
すでに獲得した権利のありがたさを、その成立過程を知らない若い教職員の人で、組合に入らないという人が増えているという状況です。
組合に入ることのメリットとデメリット
かつてのように、教職員組合が教育内容にも影響を与える力を持っていた時代はとうに過ぎ、今や国のいいなりの御無理御もっとも状態の超多忙な教職員の勤務する現場に至っては、組合活動を負担に感じる人は増えていると思います。
しかし、一方では過労死スレスレの激務をこなしている教職員の将来的な権利獲得を期するならば、組合は必要不可欠だと思います。
未だに学校では、勤務時間を管理するための裏付けとなるタイムカードすら導入されていません。過労死や精神的疾患が増えていることも確実です。こんな状況に物申すことのできる力は組合にしかありません。
一般企業では、電通事件の高橋まつりさんが話題になりましたが、学校現場でもこれに類似することが起こっています。全国津々浦々に学校はあるのですから、その何処で起こったとしても不思議ではないのです。
学校の将来像を考えた時に学校はどうあるべきか
学校教育のあるべき最低ラインとは、
1.クラスサイズの上限を15~20人程度にする。(現在上限40人)自治体ごとに若干のバラつきあり。
2.クラス担任とアシスタント講師の二人体制で学級運営に当たることを通常とする。
3.勤務時間の1日、1週間、1か月の上限規定を設けること。
4.学習指導要領、教科書、その他の教育内容を大幅に減らし、事務処理等の雑務も減らすこと。
(さらには、これらの法的拘束を外し、教師や学校に教育権を委譲すること)
5.全国学力テスト(学力調査)をとり止め、比較や競争を排除すること。
6.授業に関わる本務と、それ以外の雑務とを明確に区別するルールを確立すること
7.無定量に増える雑務は厳に排除し、それでも必要なことは教師が関わらないシステムとすること
8.その他
これらのことは、この国では絶望的と思われる状況なのですが、実は、欧州の先進国ではすでにとっくの昔から実現していることなのです。この国では、半世紀以上遅れていることを国民の皆さんはもとより、教師自身が知らないという、このネット時代に考えられない情報の廻り方の遅さはいったい何なのでしょうか。
学校現場には、正式な残業規定がない!!
信じられますか? 皆さん。
この時代に学校には、労働基準法にある36協定も協定による残業上限の規定も、何もないのです。何もないから何時間残業をしたとしても賃金は支払われない状況です。
労基法では、残業に対しての割増規定や時間の上限規定(労使の協定による)などが確立しているのですが、こと学校現場だけが、こんな、実にふざけた実態が許されていること自体、法治国家としての体をなしていないという意味でこの国は後進国なのであります。
もっと詳しく言いますと、ある一つの実にお粗末な法律があります。その名前は「公立の義務教育諸学校等の教育職員の給与等に関する特別措置法」(通称「給特法」)と言いまして、その第三条にポイントとなる以下の二つの内容が含まれています。
ポイント1.教育職員には給与の100分の4(つまり4%)の教育調整額を支払うということ。
ポイント2.時間外勤務手当及び休日勤務手当は支給しないこと。
組合と行政の時間外勤務に関するもう一つ厄介な合意事項がありまして、それはやむを得ない場合にのみ残業が許されるという限定3項目というものです。それは以下の3つの場合に超過勤務が認められて手当が支払われる場合もあるというもので、詳しくは次の3点です。
・職員会議の時間延長に関する場合には、管理職が職員に了解を得て延長するということ。
・児童生徒の修学旅行の際や宿泊学習時の引率かかわるような場合。
・その他緊急時の出来事で、例えば生徒が家出してみんなで探すというような場合。
これに関するような残業手当の発生することは、通常頻繁には起こりません。ですから本当の問題はこの先です。というのも、この合意があるということが災いして裏では無定量頻繁に行われている残業というものが、表向きには行われていないと言うことになってしまっていることの問題です。むしろこちらの方が重大です。つまり、残業隠しが大っぴらに行われても、公然と言い訳をして隠すための公的な盾があるという現実です。
※二つのことが併記されているので、あたかも時間外勤務手当(残業手当)の代わりに教職調整額を支給するという風に読み取れてしまいがちですが、条文では教職調整額の性格に触れられていないので、それが「固定残業代」や「みなし残業代」という解釈も成り立ちません。しかも「時間外勤務手当は支給しない」とあるので、なおさら意味不明です。
※結果、起こってしまっていることとは、教職員が無定量の際限なき過酷な残業を強いられているという現実です。これが、学校職場の実態です。
これらは、全国津々浦々で起こっている現象ですから、この状況に太刀打ちしようと思っても、政治的な力のない個人レベルではとても太刀打ちできない問題です。その意味では、組合は必要でしょう。
教師のほとんどは子どもたちのためならと、どんなことにも時間を惜しまずに費やすことを厭わない人たちなので、自分で自らの首を絞めているという側面もあります。そしてその善良さを国は知らん顔して悪用しているわけです。
<耳寄りな情報>JTUネットのホ-ムページのトップ画面をしたにスクロールしてみて下さい。そこに、「国際比較でみる教職員の働き方」という項目があつて、それには、日本とイングランド、スコットランド、フィンランドの4か国の教職員の働き方比較があります。参考になります。
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