教員の働き方改革?文科省「緊急対策」の内容は?
残業に手当の出ないブラックさ
超ブラックな職場の呼び声高い学校現場のあまりに悲惨な現状に、文科省もようやくその重い腰を上げつつあるということでしょうか?
「中間まとめ」として提言された中身のうち緊急提言では、学校現場へのタイムカードの導入や管理職の研修、地域保護者へ理解を求める資料作成、省内に担当部所を設ける、等が謳われています。
私はその提言のお粗末さんに唖然としました。その程度の内容の事なら30年前に徹底されていて然るべきことです。それさえも連綿と放置されてきたのです。「今更タイムカードの導入ですか」という話です。タイムカードは、勤務時間の正確な把握の第一歩ではないですか。
本来ならば、とっくの昔にタイムカードを導入して、法定労働時間を超えた部分については、満額の賃金を支払うという当たり前のことをやってこなかったというのは、労基法的に言えば、全くの違法行為であります。
教師の労働が特殊なものとして、労基法に拘束されない法の外側にあること自体が大問題であり、すぐにでも法の改正が必要なのです。取りあえず、国がやるべき第一歩としては残業手当を満額支払うということです。すべてはそこから始まることでしょう。
この国の教育は既に死んでいる
この国では驚くことに、国も国会議員も地方議員も、国民の一人ひとりも、そして当の教師本人さえも、だれもがこの国の教育の在り方以外にもまともな教育方法があるという事実を知らないという悲劇が続いて来たのです。
それは、誰もが自分の受けた教育以外に教育というもののイメージを持てないでいるということに起因しています。このインターネット社会にありながら、それほど「教育」の真の姿は情報に乗りにくいもののようです。
二つ目には、この国では明治以来「教科書主義」という教育手法が何も変わっていないということに起因しています。このことは、教科書が分厚くなれば、それは教師も子どもも忙しくなるということを意味します。
今や、小・中・高いずれにあっても教科書の内容量は殺人的な分量であります。その上に教科書主義の弊害として必ず起こることが全国一律のテストが可能になるという事です。ですから当然、それを実施してしまえば、必ず競争原理という不毛の最も良くない現象に国全体が巻き込まれていくという自明の事態を招くことになります。
そうなるとオンリーワンをめざすのではなく、ナンバーワン指向に捕らわれてしまうのは自明の理です。結果として出来上がったのが東大を頂点とするピラミット社会です。これは、もはや、人類のあるべき方向性に逆行しているとしか言いようがありません。
ピラミット社会とは、一部のエリートがいい思いをして大多数の凡人は割を食うという社会です。これは、明治以降何も変わっていません。教科書主義の当然の帰結だからです。
教育の在り方は社会の在り方を決めてしまう
日本の教育の在り方は、まさにアジア的であります。中国も韓国も極度の学歴社会でピラミット社会の弊害丸出しです。ところが、これが、ヨーロッパに行くと大きく様変わりするのです。
2000年のピザテストで一躍有名になったフィンランドなどでは、教育というもののイメージが日本とは大きく違うのです。欧州の国々では、そもそも塾などはありません。日本の実情を説明したとしても、「学校があるのに、何故塾に行くの?」と彼らには理解されません。
この象徴的な違い、このことは、欧州の学校教育が本質的な教育をしていることの証であり、塾と言うテクニック教育の横行しているこの国(日本)はそれを必要としない社会構造にある欧州の国々とは決定的に異なっているということになります。
果たして、どちらの方が健全なのでしょうか?その答えは明らかです。明治以来の教科書主義に毒されているこの国の教育は、早くドブに捨て去って、現場教師がぞれぞれに自由な教育が保障される社会になっていかなければなりません。
■欧州ではとっくの昔に「教育権」が現場に降りている。
「何が何でも、教科書の端から端まで教えなければならない」という理不尽な国の押し付けがまかり通っているこの国と、教科書を使うも使わないも現場の自由に任されている欧州の先進国とでは、現場の余裕に雲泥の差があります。
それがなぜ可能なのかと言えば、先進国では教育の主体が教師である日本とは違い、学習者である子どもが自身が学習の主体者として、自分で自分の学習内容をかなりの部分で決められるというスタイルを取っていることに起因します。自分に見合った個人カリキュラムによって学習が進んでいくというのが当たり前のことなのです。
学習者が自分で学習内容と学習方法の両方を決めることで、子どもたちは主体的に学習に向き合い、そのリスクも自分で請け負う、つまり結果に対する責任も負うというものです。翻って、日本のように黒板に向かって一斉一律の教授型の教育では、必ず、一定割合の落ちこぼれた子どもたちがあくびを押し殺しながら壁の時計を横目に見ながら「早く終われ」と念じている拷問のような学習風景とは異なります。
どちらが本来あるべき教育(=学習)の在り方なのかは、子どもだってわかるはずのことでしょう。でも、それが、改善されることはこの国ではないことです。それは、教科書を提供する国が教育権を掌握してしまっているからです。長年それに固執したこの国は、今や教育の後進国になり果てたということですね。
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