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IKEA(スエーデン家具)の戦略 全従業員の正社員化とは?

■渋谷・新宿に店舗展開

IKEAと言えば郊外型の、ユーザーは主に車で訪れて買い物をするというイメージの強い店舗展開をしてきたスエーデン家具の外資企業である。

車に乗せることのできるサイズの買い物は車に積み、ベットなど大きな買い物は配送を依頼することになる。そんなことが定番の店舗展開なのだが、ここにきてIKEAは渋谷や新宿などの都心の繁華街にも店舗を開くという方向修正をしたようだ。

すると、これまでIKEAを訪れたことのなかった新しい若い層を集客することができたというのだ。注目すべきことである。都心の店で現物をみて、気にいったものをネットでその場で注文するというsystemだ。QRコードからスマホで注文できるということだ。

IKEAにはもう一つ注目すべきことがある。それは労務管理に関することである。
IKEAでは、このところ全従業員に関して、短時間勤務の正社員とフルタイム勤務の正社員という形で、すべての従業員を正社員化したという。

一見、今どきの企業のやり方とは真逆の方向にも見えるが、その効果は絶大のようだ。
まず、正社員化したことで辞める人が少なくなり、商品に関する情報や理解が蓄積されて、接客にも好影響が増したというのだ。そのお陰で離職率が40%も減ったということは、雇用や人材育成にかかる費用が減らせたということだろう。

さらには、従業員にとっては、子育てなどの人生のステージに合わせて短時間勤務の社員とフルタイム勤務の社員を行ったり来たりすることが可能という。
また、管理職への昇進は立候補制で自ら選択していける方法が取られている。そこも画期的である。

■企業の本来あるべき方向の労務管理

そもそも、今どきの世の中の風潮として、この国ではアルバイト従業員を便利に使い倒して自らはぬくぬくと肥っていくという雇用関係が横行しすぎている。使い倒される方の従業員は何時までたっても給与は上がらず、社会保険などの身分保障もままならない。

非正規の労働者は、中・長期に渡る人生の設計図が描けない。結婚や子育て、家の購入など人生の節目節目におけるまとまった資金調達もままならないし、希望や幸福な未来像を描くことが難しくなるばかりだ。

そうならば、当然の事だが労働意欲も続かないし、無為な転職も増えることになろう。このような状況に政治的に拍車をかけたのが、小泉政権下での派遣労働法の改正であった。
経済界の御都合に合わせて、それこそ労働者(人間)の大切な人生を安く破格の値下げをして企業に売り渡してしまったのだった。

IKEAの今回の手法と戦略は、それらに対するアンチテーゼのようにも思えるのは、果たして私だけだろうか。人々の幸福な生活というものを担保できるような社会システムでなければ、持続可能な社会とはならないはずだ。

厳に、この国では少子化にはいっこうに歯止めがかからないし、増々悪化の一途を続けている。子どもの貧困、教育の貧困、奨学金とは名ばかりの多額の借金を抱えて進学する大学生活。

消費税という名の逆累進課税、物の値段は下がらず、ジワジワと値上がりしていく中、コロナ禍も相まって収入の方は下がるばかりで生活破壊が進んでいる。この国の国民はこぞって負のスパイラルに落ち込んでいる実態だ。

この状況に関して政治が対応する動きは、実に鈍い。そこまで政治家は無能なのか。IKEAの爪の垢でも煎じて飲むが良い。

■この国では収入の格差が問題なのか、底辺の底上げが問題なのか?

今では「ワーキングプア」という言葉がすっかり定着したようだが、つまり「働けど働けど、我が暮らし楽にならず」という意味である。コロナ禍の世情下、ホームレスやネットカフェ難民が増加している一方で、今どきの住宅建設も増えているように思う。やはり、格差が拡大しているからなのだろうか?

国民に対して国の果たすべき役割とは、荒っぽく言えば、基本的には富裕層の貯えた富に対して高い税金を徴収し、それを貧困層に分配することである。いわゆる富の再分配というものだ。ある意味でこの基本理念を律儀に守っているのが欧州諸国である。

欧州では、消費税などは高く設定されているようなことはあるものの、教育や福祉などはタダ同然であり、医療や子育てにも手厚い支援があるようだ。そんな社会体制(system)を国民自体が選択して今に至っているというわけだ。

それにより、格差の是正とボトムアップが計られているというわけだ。日本が本来目指すべき姿もその辺にあるように思われる。

■IKEA未体験の人のために

IKEAの業態について、詳しく知らない若い層の人のために少し、補足説明をしておこう。
本来IKEAは、郊外型の大型店舗で、家具を中心に販売しているが、商品はそれだけではなくたくさんの自社開発のグッズも多い。

大きなレストランも併設している。客層の多くは若いファミリー層で、大概はマイカーでやってきて、広大な駐車場に車を止め買い物をする。

家具は高級なヨーロッパ家具ではなく、自社開発の組み立て式の物である。ターゲットは低所得層のどちらかと言えば若い層である。

競争相手のニトリを想定していただくと近いイメージになると思う。自分の車に乗らなければ配達ということになる。ネットでも注文、配達依頼は出来る。

ただし、購入した家具を自分で組み立てるとなるとやや骨が折れる感じがする。部品が複雑な場合が多く、直感的イメージだけでは組立てにくい。配達の際に組み立てまで依頼するとその分費用は高くなる。東京都心部在住の若い人にも、新宿・渋谷の都心型IKEAに一度足を運ぶのも一興だと思う次第であります。

また、amazonを介してのネット通販なども行なっているので、そちらの方での買い物もできるようになっている。しかし、家具などはできれば店舗に足を向け、実物をみて触ってみての感触を確かめた上で買い物できると失敗が少なくなるだろう。

いずれにしても、この記事のテーマはIKEAの従業員の雇用形態が非正規から正規雇いに進化したというものであるので、店舗に寄られた際には、是非従業員の接客の様子などにもそれとなく目を向けてほしいものである。

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