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就活生に送りたいほろ苦いブルース? 「いちご白書をもう一度」

 

いつか君と行った映画がまた来る
授業を抜け出して二人で出かけた

こんなフレーズで始まる歌が「いちご白書をもう一度」です。これは、1975年ユーミンの作詞作曲でリリースされ、バンバンというデュオが歌いヒットしました。

さすが、ユーミンの饒舌な表現性に支えられてのヒットではありまあすが、この歌には1968年・69年当時の学園紛争に遭遇した青春時代を送った世代に特有の背景を知らなければなりません。

基礎知識として

ユーミンの歌のモチーフとなる映画「いちご白書」ですが、この映画は、1968年、ニューヨークのコロンビア大学で起こった大学紛争を背景に、男子学生サイモン(ブルース・ディヴィソン)と女子学生リンダ(キム・ダービー)の淡い恋を絡めた内容として描かれたものです。1970年公開です。

私の印象として超最高級の映画あり、ではないものの、学生運動が題材になっている社会的な意味があるということに好感が持てました。また、カメラワークが面白かったという記憶があります。そして、カンヌ国際映画祭では審査員賞を受けています。

なぜ「いちご白書」なのかという理由は、コロンビア大学の学部長ハーバート・ディーン氏の発言に学生が反発して紛争が起こった要因と関わっているものです。

さてここからが本題

僕は無精ひげと髪を伸ばして
学生集会にも時々出かけた

1968年・69年という年は、アメリカでもフランスでも、日本でも学生紛争の嵐が吹き荒れた時期です。東大でも紛争があり、入試が取りやめられたこともあったほどです。この時期、日本全国の多くの大学で紛争が起こり、学生たちは反権力の旗印のもと政治的に闘ったのでした。

就職が決まって髪を切って来た時
もう若くないさと、君に言い訳したね

歌のヒロインは、少なくともかつては学生運動にも心理的に賛同し、集会にも時々で出かけしてたとあります。だけども、やがて卒業と就職という2つのミッションを果たそうとするときに、当然それまでの心情を否定するか隠すかして、社会と妥協することが就活者の生きる道となっていくのです。

そのことへの居心地の悪さや転向することへの恥ずかしさ・きまり悪さのような心情が歌い込まれています。自分の時代経験とこの映画やユーミンの歌の内容が、とてもクロスするのです。

皮肉なことですが、この時代は、高度経済成長時代で学生の就職には追い風が吹いていました。ベビーブーム世代の大量な採用にも受け皿が存在したのです。非正規雇用も今よりははるかに少なかったと思われます。

今どきは、長髪の紙を切るのは就活を始める前ですが、この歌では「就職が決まって、髪を切った」とありますから、今よりはるかに大らかだったのでしょう。

君も見るだろうか、「いちご白書」を
二人だけのメモリーどこかでもう一度

学生時代に付き合っていた彼女とは、今は繋がりがないがほろ苦い思い出(記憶)だけはある。そんな中でリバイバルされる「いちご白書」、もう一度見てみようかなという誘惑にかられ、それは以前の彼女との思い出を辿り直す行為でもあるのです。

今時の就活では

今どきの就活でも、自分の姿を変えて採用を狙うというのは変わりはないかも知れません。リクルートスタイルに身を固めて会社説明会に行くのはもちろんですが、それだけにとどまりません。

応募する会社に合わせて、自分の自己PRや志望動機をカメレオンのように変更せざるを得ないというのが現実かも知れません。一人で何人もの人間を演じ分けることで内定を勝ち取れるという現実があるとすれば、それは居心地の悪さの点で変わっていない残念なことですね。

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